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僧侶と巡る『女人高野 室生寺』心安らぐスポットを訪ねて

奥深い山間に建つ古刹「室生寺」。四季折々の麗しい自然美に魅了され、柔和な表情の仏像に心をゆだねるひととき。訪れる誰もが心洗われる境内の癒しスポットを僧侶の山岡さんと巡ります。

取材協力:女人高野 室生寺

室生寺

室生寺の散策スタート

清流・室生川に架かる朱塗りの太鼓橋。四季折々の表情が楽しめる有名なスポットです。太鼓橋を中腹まで進むと、室生寺の入り口「表門」が見えてきます。まるで室生寺へと続く“虹の懸け橋”のように見えますね。

さあ、境内へ入ってみましょう。迫力ある二体の仁王像が安置された「仁王門」をくぐります。

左手にはバン字池が見えてきます。よ~く見ると、カエル、アメンボと、小さな生き物の姿も!

女性参拝者
「自然が豊かで、とっても静かなお寺ですね。」

 山岡さん
「当寺は山岳寺院ともいわれるように、大変山深い場所に建っております。水が清く、空気が澄み、境内の草花は一年を通じて様々な表情を見せてくれます。小さな生き物たちにもたくさん出会えますよ。」

池を過ぎると見えてくるのが自然石を積み上げてできた石段の参道「鎧坂(よろいざか)」。下から見上げると、鎧の草摺(くさずり)に見えるところからこの名がつけられました。

女性参拝者
「下から見上げると、とても長く感じられますね。」

 山岡さん
「室生寺の序章ともいえる石段です。奥の院まで登ると、700段ほどありますよ。ゆっくり参りましょう。」

石段を挟むように、両側には季節の草花が植えられ、春はシャクナゲ、夏は深緑、秋は紅葉、冬は雪景色と、自然美で彩られる場所です。この石段を、一段一段踏みしめるように登って行きましょう。

鎧坂を登ると、平安時代に建てられた杮葺(こけらぶき)の屋根が特徴の「金堂」に到着。室生寺には、国宝3体を含む貴重な仏像が安置され、特に金堂は国宝の「釈迦如来立像」をはじめ、貴重な仏像がずらりと並び、気品漂う雰囲気です。

さらに山の上をめざし、階段を登ると「本堂・灌頂堂(かんじょうどう)」に到着します。ここは、仏様と縁を結ぶために行う、真言宗において大切な儀式「灌頂」※を行うために建てられたお堂です。鎌倉時代に建立され、現在は国宝に指定されています。
※「灌頂」とは、頭に水をかけて、悟りの位に進んだことを証する儀式のこと。

それでは、お堂の中に入ってみましょう。
安置されているのは「如意輪観音坐像(重要文化財)」。片膝を上げ、肘をかけて指先を頬に当てているのは、思惟(しい)のお姿。ふっくらとした質感と優しい表情から、多くの女性参拝者の心を癒してきた仏像です。

女性参拝者
「おだやかで、優しい表情の仏様ですね。女性の心を受け止めてくれるような愛情を感じます。」

山岡さん
「人々を苦悩から救い、あらゆる願いを叶えてくれる仏様です。多くの女性の悩み、苦しみをお聞きになり、優しい表情になってきたのかもしれませんね。」

女性参拝者
「室生寺は女人高野ですから、参拝者も女性の方が多いのですか?」

 山岡さん
「そうですね。女性の方がお一人でいらっしゃるお姿もよく拝見します。観音様と対峙され、涙を流される方も少なくありません。仏様と向き合い、心安らげる時間をお過ごしになっているのでしょう。」

石段を登り室生寺のシンボルである国宝「五重塔」へ向かいましょう。奈良時代後期に建立された古塔は、高さ約16メートルと「日本一小さく、美しい五重塔」として知られています。

女性参拝者
「石段から見上げると大きな塔に見えたのに、近くで見ると小さく感じるなんて…不思議です」。

山岡さん
「それは参拝される方からよく聞くお声です。塔の構造に特徴があり、目の錯覚を起こすような仕組みになっているようです。先人の方々の知恵ですね。」

さあ、いよいよ室生寺の最終章、「奥の院」へ向かいましょう。
室生寺で最も神聖な場所とされる奥の院へと続く参詣は、杉木立に囲まれ、昼間でも光が届かない薄暗い道。後ろを振り返るのも怖くなるほど急な石段で、370段ほどを登っていきます。

頂上に到着です!

神聖な場所だけあって、凛と張りつめた空気を感じます。奥の院には、弘法大師をお祀りしているお堂「御影堂」があり、その傍らのゴツゴツした岩場の頂上には可愛いサイズの「七重石塔」が建っています。

昭和初期に建てられた「常燈堂(じょうとうどう)」は、急な斜面に建築物を建てる懸造(かけづくり)。陽が傾きはじめると、お堂の向こう側から光が差し、神々しい雰囲気に包まれます。

女性参拝者
「豊かな自然、柔和な仏像と、室生寺には、心を動かされる事物がたくさんあるのですね。静かに手を合わせて祈る時は、自分を顧みる貴重な時間。力がみなぎる気持ちさえしてきます。とても親しみを感じる場所だと思いました。」

山岡さん
「境内には観る視点を変えると、身近に感じることがたくさんありますよ。何度も足をお運びいただく中で、これまで気がつかなかった室生寺の側面を知ってもらえればありがたいです。」

自然の中に身を置き、慈愛に満ちた仏像を眺める時間は、室生寺にしかない心安らぐひととき。「元気をもらいたい」「心を整えたい」と願う方は、ぜひ足を運んでみてください。

愛しき室生寺の十二神将

薬師如来や薬師経を信仰する者をお守りする十二体の仏尊。十二体それぞれの表情、ポーズがあり、安置されている寺によってもその表情はバラエティに富みます。鎌倉時代中期に作られた室生寺の十二神将は、今にも動き出しそうで、躍動感にあふれ、イキイキとした表情が魅力!ここでは、特に個性的な三体をご紹介しましょう。

ユニークな表情の未神(びしん)像 
(重要文化財/宝物殿に安置)

頬杖をついておどけた表情がなんともユニーク!空を見上げて、考えごとでもされていらっしゃるのかしら?

強面キャラの戌神(じゅつしん)像 
(重要文化財/金堂に安置)

人差し指を天に向け、眉間にシワを寄せる凄みの効いた表情!悪事を働く者には容赦ない…と言わんばかりです。

愉快なポーズの子神(ししん)像
(重要文化財/金堂に安置)

満面の笑みで「いらっしゃ~い」のポーズがなんともユーモラス!人生の悩みも笑い飛ばしてくれそうです。

 

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